スクワットにおける足関節の可動性 その4


前回までの記事で足関節の構造とその機能、そしてそれらの機能不全がその他の関節に与え得る影響を理解し、実際にどのように評価するかをまとめました。

スクワットにおける足関節の可動性 その1
スクワットにおける足関節の可動性 その2
スクワットにおける足関節の可動性 その3

そして、今回は機能不全があった場合、それをどのように改善するのかをまとめていきたいと思います。

前回の記事でもお伝えしましたが、1つの方法で全てを解決することはできません。
原因に見合った解決策を選択する必要があります。

足関節背屈制限の主な原因としては

  • JMD:Joint Mobility Dysfunction
    骨関節炎、癒合、癒着、骨棘、過剰な石灰化、関節包、靭帯による可動性の低下
    外傷後に起こることが多く、足関節前面につまり感がある。
  • TED:Tissue Extensibility Dysfunction
    筋や筋膜、神経などの軟部組織における伸張性の低下
    座位中心の生活やハイヒールによって引き起こされる。

があげられます。
勿論、上記の二つが同時に起こっていることもあります。
骨棘などによる関節運動の制限により二次的に下腿三頭筋の伸張性が低下することはよくありますね。

解決策の主なものとしては、

  • Mobilize (モビライズ)
  • Self Myofascial release (筋膜リリース)
  • Stretch (ストレッチ)

などです。
まず考えなくてはいけないことは、クライアントの問題が解決できうる問題なのかを見極める必要があります。
骨癒合や変形性関節症などの場合は我々トレーナーが全ての問題を解決することはできません。
整形外科のドクターと相談しながら解決できない部分を受け入れ、解決できる部分に焦点をあて接する必要があるかと思います。

THE SERENITY PRAYER (ニーバーの祈り)

神よ、

変えることのできるものについて、
それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。
変えることのできないものについては、
それを受けいれるだけの冷静さを与えたまえ。
そして、
変えることのできるものと、変えることのできないものとを、
識別する知恵を与えたまえ。

その上で、骨棘の形成、関節包や靭帯の可動性低下などによる関節の機能不全には上記の関節モビライゼーションがその解決策となり得ますし、軟部組織の伸張性の低下が関節運動を阻害している場合は、フォームロール、ストレッチが解決策となり得 ます。
軟部組織に対してはフォームロールやスティックなどを用いた筋膜リリースを行った後、ストレッチを行った方がより伸張性の改善効果が高いです。
上記の両方が関節運動を制限している原因であれば、私は筋膜リリース、ストレッチ、モビライズといった順番で行っています。
これに対しては様々な考えをお持ちの方がいらっしゃるかと思いますが、関節運動の中間域を制限する軟部組織を改善した上で、最終域を制限する関節にアプローチする方が効率がよいと考えています。

Self Myofascial Release (筋膜リリース)

軟部組織の伸張性を改善する第一歩はフォームローラーを用いた筋膜リリースを行います。

  • フォームローラーの上に一方の下腿部を乗せ細かく上下左右に動く。
  • 近位、遠位、内側、外側を行い敏感な部分を探す。
  • 他の部分よりも敏感な部分を見つけたら10秒間そのまま保持する。
  • 再度動かしながら敏感な部分を探す。

刺激を強くしたい場合はフォームローラーに乗せた下腿の上にもう一方の脚を乗せたり、敏感な部分で足関節を底背屈したり(Ankle pumps)、足関節で円を描きます(Ankle circles)。

フォームローラーを行う際に体重が重い選手や痛みに敏感な選手の場合は上の画像のマッサージスティックを用いると良いです。
方法は基本的にはフォームローラーと一緒ですが、ベンチに乗せた方の足関節を背屈させながら行うとさらなる効果を引き出すことができます。

もう一つ大切な点としては、アキレス腱と足底筋膜は直接結合していますので、下腿後面を筋膜リリースする際は足底も合わせてリリースすることが必要です。

足底部のリリースにはゴルフボール、ラクロスボール、テニスボールなどが適しています。
硬さや大きさによって刺激の強さが異なるので心地よく感じられるものを選ぶとよいかと思います。
方法は下腿部の筋膜リリースと同様、前後左右に動かしながら敏感な部分で10秒保持し、再度動かしながら敏感な部分を探します。
敏感な部分で保持している際に、足趾を底背屈するとさらに刺激を与えることができます。

Stretch (ストレッチ)

筋膜リリースを行った後にストレッチを行い筋の伸張性を改善していきます。
上の動画ではSlant Boad (傾斜板)を用いて下腿部のストレッチを行っています。

下腿三頭筋は膝関節をまたぐ腓腹筋とまたがないヒラメ筋で構成されています。
膝関節伸展位で腓腹筋、膝関節屈曲位でヒラメ筋をストレッチすることができます。

もし、傾斜板がないという場合は、下の動画のWall Calf Stretchがお勧めです。

壁に正対して立ち、つま先を壁につけ足関節を背屈位にします。
上記の姿勢を保持したまま壁に向かって前に倒れることで下腿三頭筋を効果的に伸ばすことができます。
こちらも膝関節伸展位と屈曲位で行います。

筋膜リリースの説明の際にもお伝えしましたが、下腿三頭筋はアキレス腱を介して足底筋膜と直接欠どうしています。
ストレッチに関しても足底筋膜も合わせて行うと効果的です。

壁に正対して痛みが伴わない程度に足趾を最大に背屈させます。
上記の姿勢を保持したままゆっくり膝を壁の近づけます。
その際に、踵が地面から離れないように気をつけましょう。

Mobilize (モビライズ)

上の動画はMulligan Technique(マリガンテクニック)のMWMs(Mobilization with Movement)を行っているものです。
MWMsは四肢関節における運動併用モビライゼーションで、足関節の前面につまり感や痛みを伴う背屈制限がある際に効果的です。

  • 後方のラックや柱にバンドをひっかける
  • 前側の脚の距骨にバンドを当てる
  • 前側の足の踵を地面につけたまま膝を前方に倒し足関節を背屈させる
  • 前方、内側、外側の3方向行う

この動作を行う際の注意点としてはバンドを適切な位置よりも上に引っ掛けることです。
スクワット動作において足関節を背屈させるには、距骨が後方に滑り、その上を脛骨が前方に滑る必要があります。

詳しくはこちらをご覧ください。
スクワットにおける足関節の可動性 その1

その為、バンドを距骨ではなく上方の脛骨に当てた場合、距骨の後方への滑りを引き出すことができず、反対に脛骨が後方に移動することで相対的に距骨が前方に偏位してしまいます。
大切なことは距骨の後方への滑り運動を引き出し、関節包内運動を改善することです。

足関節の背屈可動域が改善してきた際によりダイナミックな動作での足関節背屈運動を行ってもらう場合もあります。

名前の通りアヒル歩きをするエクササイズです。
深くしゃがんだ姿勢で前方に歩くには、十分な足関節の背屈動作が必要とされます。
膝を外に逃がしてしまうと適切な足関節の背屈が得られないためモビリティドリルとして行う際は、つま先と膝を正面に向けて動作を行うと効果的です。

まとめ

  • 足関節の背屈制限の主な原因としては関節に起因するJMDと筋などの軟部組織に起因するTEDがあげられる。
  • 足関節の背屈制限に対する改善策としてはMobilize (モビライズ)、Self Myofascial release (筋膜リリース)、Stretch (ストレッチ)があげられる。
  • JMDに対してはMobilize (モビライズ)、TEDに対してはSelf Myofascial release (筋膜リリース)、Stretch (ストレッチ)が効果的。
  • Self Myofascial release (筋膜リリース)を下腿部に行う際には、アキレス腱と直接結合している足底筋膜も同時に行うとより効果的。
  • Mobilize (モビライズ)を行う際にはMulligan Technique(マリガンテクニック)のMWMsが足関節の背屈運動における関節包内運動を改善することができ推奨される。

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