緊急時行動計画書はありますか? その3


前回までの記事で緊急時行動計画の実例、そして緊急時行動計画の必要性について触れました。

緊急時行動計画書はありますか? その1
緊急時行動計画書はありますか? その2

今回の記事では実際の作成にあたり注意すべき点をNATAのポジションステートメントを参考に確認していきたいと思います。

緊急時行動計画書を策定する際のポイント

  • 緊急時行動計画書を文書化し提示する

競技活動を提供する施設や組織は職務上、法律上の責任を果たすため緊急時行動計画書を策定する必要があります。
さらに、策定した緊急時行動計画書は包括的かつ実用的であり、様々な状況下で適応する柔軟性をもっていなければなりません。
そして、ただ書面にするだけではなく適切な場所に提示し、関わる全てのスタッフが常に確認できるようにすることが大切です。

  • 緊急時行動計画書を配布する

文書化した緊急時行動計画書は組織や施設の安全管理者、コーチ、医師、トレーナーなどの関係者に配布し、各自携帯する必要があります。
また、ポジションステートメントでは緊急時行動計画書は地元の救急隊と相談して作成し、報告すべきだとしていますが、日本では救急隊の方々にお時間を頂くのは難しいのが現状です。
私も個人的に消防の方、救急救命士の方などに現状を聞いてみたのですが、前例がなく現時点では難しいのではないかといった返答でした。
とは言え、我々トレーナーから各専門家との協力関係が構築できるよう働きかけることも今後は必要かもしれませんね。

  • 人員と能力の特定

まずは緊急時の対応に関わる人員を特定します。
そして、どのような能力を保持している必要があるかも特定します。
実際に緊急時の対応にあたるスタッフはAED、CPR、応急処置、感染症の予防などの訓練をしておかなければなりません。

  • 機材の明示

緊急事態が生じた際に必要とされる機材を明示し、その保管場所も特定します。
また、全ての機材を定期的に点検し、利用できる機材は使用するスタッフのレベルに適していなければならないとしています。
どんなに高度な機材があっても、機器に不具合があったり、それを使いこなす知識や技術がなければ飾りでしかありませんね。

  • 連絡手段と搬送方法の確認

救急隊と連絡を取る際の明確な手段の確立と搬送方法を確認し明示します。
連絡を取る際は携帯電話が優先順位として高いですね。
私は大会当日は携帯電話の充電をフルにし、常に持ち歩くようにしています。
また、実習生などがいる場合は、事前に救急隊に連絡をする担当者を決めておき、いざという時傷病者の対応に集中できるようにしています。
実習生やあまり人がいない環境の場合は通信障害が発生した場合に備えて、代わりの連絡手段を有効にしておくことも必要ですね。

搬送方法についても訓練で実際に搬送して確認してみると見逃していたことに気づくことがあります。
救急車は何分で到着し、どこまで進入できるのか、スパインボードで通るスペースはあるのかなどそれぞれの環境での問題点を事前に知ることができます。

表1

表1は消防庁が平成29年に発表した「救急車現場到着所要時間及び病院収容所要時間の推移」と「現場到着所要時間別出動件数の状況」がら抜粋したものです。
救急車の現場到着所要時間は年々増加傾向にあり、全国平均では8分30秒かかるようです。
宮城県においては全国平均とほぼ同じの8.6分となっています。
ちなみに東京都は全国で唯一2桁だいの10.8分です。

  • 競技会場ごとの作成

緊急時行動計画書は競技会場ごとに作成する必要があります。
私自身トレーナーとして様々な競技種目、屋内、屋外などの異なる会場で活動させて頂きました。
救急車の進入経路、搬送経路、AEDの保管場所、機材の種類など10の施設があれば10通りの環境が存在するのをみてきました。
その為、会場入りしてまず私が行うことは施設を歩いて回り、その会場の緊急時行動計画書を作成することです。
その際、AEDから競技場までの時間を測り、自分で取りに行くのか、持ってきてもらうのかなどの対策を考えます。
もちろん、休日担当の病院や救急病院など事前に調べのつくものは予め確認しておくと当日の負担が減りますね。

  • 搬送先への事前通知

ポジションステートメントでは緊急時行動計画書は、傷病者が搬送される救急病院も含めて作成すべきだとしています。
そして、イベントや競技会が予定されている場合、救急病院に事前に通知しなければならないとしています。
私自身は実際に上記を行ったことはありません。
もしかしたら、大きなイベントがある場合は運営組織が事前に通知しているのかもしれませんが、現状はどうなのでしょうか?

  • 証拠文献の明示

緊急時行動計画書を策定する際に、その実施と評価を支持している文献を明示する必要があります。
そうすることで過失に基づく請求、訴訟の際に講じた処置の正当性を示す根拠となります。

  • 年に1回のリハーサルを行う

緊急時行動計画書は緊急時に適切な対応ができるようにするための青写真です。
全ては適切な行動のための計画書です。
「知っている」と「できる」の間にある大きな壁と同じで「提示した」と「行動した」の間にも大きな壁があります。
計画を行動に移すためのリハーサルを最低1年に1回は行う必要があります。
仮に、1年に1回行うのであれば、特に危険性の高まるシーズン前がタイミングとしてはいいかもしれませんね。
また、その日時を明確に示すことも大切です。
「1年に1回行う」と「毎年シーズンに入る前の3月1日に行う」では明らかに行動が異なりますよね。

  • 職務的責任と法的責任の共有

競技活動を提供している組織と関係者が、傷病者の緊急時対応を適切に果たすべき職業上の責任を明示し、共有をします。
また、上記に対しての法的な責任も有していることも共有する必要があります。

  • 管理者と顧問弁護士による見直し

これはどちらかというと競技活動を提供する組織や団体においての話になると思います。
策定した緊急時行動計画書は運営組織の顧問弁護士や管理者によって見直されるべきだとしています。

まとめ

以上が緊急時行動計画書を策定する際のポイントになります。
私自身上記の中で現時点で出来ているものと出来かねているものがあります。
緊急時行動計画書は1度作成して終わりではなく、常にバージョンアップしていくことが大切です。
私も「選手の命と生活の質」を守るためより良い行動計画書の策定、そしてそれをしっかりと行動に移せる訓練を怠らないよにしていきたいと思います。

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