スクワットにおける膝関節の安定性 その1


今回はスクワットにおける膝関節の安定性について数回にわたってまとめていきたいと思います。
以前の記事で

スクワットにおける足部の安定性
スクワットにおける足関節の可動性

についてまとめました。
なぜ膝関節は安定性なのかについてはこちらをご覧ください。

初回である今回は膝関節を構成する骨についてを記事にしていきます。

膝関節を構成する骨

膝関節は

  1. 大腿骨
  2. 脛骨
  3. 膝蓋骨

の3つの骨で構成されています。

大腿骨(Femur)

大腿骨の遠位端には外側顆と内側顆があり、外側および内側上顆が各顆部から突出し、内側・外側側副靭帯が付着しています。
遠位端の内側顆と外側顆の間にある顆間窩は前・後十字靭帯の通路を、前方で顆間溝は膝蓋骨後面と膝蓋大腿関節を形成します。
大腿骨の形状で膝の機能に影響する要因として考えるべきことは

  • 頚体角
  • 前捻角

の2つです。

頚体角

頚体角とは前額面での大腿骨頚と大腿骨体のなす角度のことを言います。

大腿骨の骨体はわずかに内側方向に曲がりながら膝関節まで伸びます。
これは近位大腿骨が125度の頚体角をもつからです。
その為、膝関節では外側に170-175度の角度を成すのが正常の骨配列で、この角度が170度以下の場合を過度の外反膝またはX脚と呼びます。
反対に180度以上の場合は内反膝またはO脚と呼びます。
特に、頚体角が125度より過剰に小さい場合は、しゃがむ際に膝が内側に入ってしまいますので微調整が必要となります。

前捻角

前捻角は大腿骨頚と大腿骨体の水平面での捻じれのことを言います。

大腿骨頚は大腿骨内外側顆を通る内外軸に対して約10-15度前方に位置しています。
15度より大きい捻れは角は過度前捻といい、逆に15度より少ない場合は後捻といいます。
過度前捻は先天性股関節脱臼と関連性があり、関節不適合や関節軟骨の摩耗が増大します。
また、大腿骨が内側に捻じれているの為、しゃがむ際に膝が内側に入りやすい傾向にあります。
スクワットの際に内側に入る選手は前捻角の確認もした上で微調整する必要があるかもしれません。

Craig Test

腹臥位にて大転子を触診します。その際、膝伸展位で股関節を内旋、外旋しながら確認します。
続いて膝関節を約90°屈曲位にした状態で股関節を内旋・外旋して、大転子が一番突出した部分を触診し、その角度を評価します。

>15度:過度前捻
<8度:後捻

こちらの動画ではゴニオメーターが脛骨の長軸からズレているように見えますが、カメラアングルによるものだそうです。

スクワット動作の機能に直接的に影響することはほぼないかとは思いますが、もう一つ大切なことも確認していきたいと思います。

顆間窩

大腿骨遠位端の内側顆と外側顆の間には顆間窩という溝があり、十字靭帯の通路を形成しています。
この顆間窩の幅が平均より狭い場合、前十字靭帯損傷の発生率が増加する可能性が高いとされています。
我々がこの顆間窩の幅を評価することはできませんが、発生率に影響する1つの要因として頭の片隅においておくと良いかもしれませんね。

上記以外にも、特に女性の前十字靭帯損傷の発生率を高める解剖学的特徴として

  • 広い骨盤幅
  • 大きい大腿骨前捻角
  • 脛骨外捻
  • 未熟な大腿部筋
  • 未発達な内側広筋
  • 過伸展膝
  • 外反膝傾向

などがあげられます。

脛骨・腓骨(Tibia and Fibula)

脛骨の近位端は内側顆と外側顆へと広がり、大腿骨遠位端と関節面を形成しています。
内側と外側の結節で形成される顆間隆起の前後には前・後十字靭帯と半月が付着します。

脛骨がスクワット動作の機能に影響し得ることで理解しておくべきことは脛骨の外捻です。
脛骨の遠位端は長軸周りで、近位端に対して約20-30度捻れています。
その為ストレングストレーニングにおけるスクワット動作ではつま先を30度外側に向けることを基準とします。
しかし、上記の脛骨の外捻が大きい選手は通常よりもつま先を外側に向けるよう微調整する必要があります。
もし、この過度の脛骨の外捻についての理解がなく型にはめてスクワット動作を行えば、膝関節が相対的に内側を向いてしまうことになるでしょう。
何事においても基準を持ったうえで微調整することが大事ですね。

腓骨は荷重をほぼ受けない骨ではありますが、外側側副靭帯や大腿二頭筋の付着部として役割を果たし、間接的に膝関節の安定性に寄与しています。

膝蓋骨(Patella)

大腿四頭筋腱内に埋没した三角形の形状をした骨で、人体最大の種子骨です。
膝蓋骨の主な機能的役割は、てこの腕を長くすることで大腿四頭筋の働きを最大限に発揮させることです。


三角形の頂点である膝蓋骨尖が下方に向き、この膝蓋骨尖と脛骨粗面の間には膝蓋靭帯が付着しています。
ジャンプ動作の繰り返しにより大腿四頭筋の負担が増加すると膝蓋骨尖の下部に痛みがでることがあり、「ジャンパーズニー」と呼ばれています。
スクワットにおいても膝関節優位で動作を繰り返すことで大腿四頭筋に過度の負担が増え、膝蓋骨の上部、または下部に痛みが出る場合があるので注意が必要です。

また、膝蓋骨は複数の骨化中心から発生するので、骨化中心の癒合不全から2つに分かれたまま(二分膝蓋骨)になることがあります。
一般的には膝蓋骨の上外側四半分が多いので、その部位に運動時痛や圧痛がある場合は医療機関で診断を受けた方が良いかと思います。

膝蓋骨の内側関節面と外側関節面でつくられる角を膝蓋骨開口角といい、通常約130度とされています。
この内側関節面の大きさや膝蓋骨開口角、大腿骨滑車面の形成不全は膝蓋骨脱臼という膝蓋骨の不安定性をもたらします。
広い意味で、膝関節を安定性の関節と考えた場合、膝蓋骨の安定性も大切な要因となります。

膝蓋骨の後関節面は4-5mm厚の関節軟骨で覆われていて、大腿骨の顆間溝と接触し、膝蓋大腿関節を形成しています。
この関節軟骨には血管が存在していないため、一度傷ついた軟骨は自己再生能力に乏しく、修復は困難とされていましたが、外傷性軟骨欠損症や離断性骨軟骨炎によるこの部分の軟骨損傷に対して、近年、自家培養軟骨「ジャック」を用いた手術が行われるようになってきています。

日本整形外科学会が、厚生労働省の新医療機器使用要件等基準策定事業において策定したジャック使用の実施医基準によると

ジャックの使用目的、効能又は効果として膝関節における外傷性軟骨欠損症又は離断性骨軟骨炎(変形性膝関節症を除く)の臨床症状の緩和であるが、他に治療方法がなく、かつ軟骨欠損面積が4㎡以上の軟骨欠損部位に適応する場合に限る。

私自身、ジャック手術を行ったクライアントを担当した経験がありますが、過剰軟骨の形成による膝蓋骨のマルアライメントなども考慮しながら接する必要があるかと思います。
医科学技術の進歩は目覚ましく我々も日々情報をアップデートをする必要がありますね。

今回は膝関節に関わる骨について記事にしました。
次回は今回まとめた骨が形成する関節の1つである脛骨大腿関節の安定性に寄与する受動的なシステムについて記事にしたいと思います。

まとめ

  • 膝関節は大腿骨、脛骨、膝蓋骨の3つの骨で構成されている。
  • 大腿骨は頚体角と前捻角を持ち、その角度が膝の安定性に影響を及ぼす。
  • 脛骨は外捻角を持ち、過度の外捻は膝の安定性に影響を及ぼす。
  • 膝蓋骨は大腿四頭筋の働きを最大限にするが、スクワットにおいて膝関節優位で動作を行うと慢性障害につながる。

スクワットにおける膝関節の安定性 その2

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