スクワットにおける足部の安定性 その3
その2では構造上の問題、機能不全による足部の安定性の欠如が、その他の関節にどのような影響を与えるかにつてい触れました。
今回の記事ではもう少し視野を広く、外力に対する安定性についてまとめていきたいと思います。
スクワットにおける足部の安定性 その1
スクワットにおける足部の安定性 その2
スクワットにおける足部の安定性 その4
外力に対する安定性
- 物体の質量が大きい
- 重心が低い
- 支持基底面が広い
- 重心が支持基底面の中央位置する
の4つあげられます。
1については、物体の慣性が質量に比例することから理解できます。
慣性とは「静止している物体は静止状態を続ける」か「運動している物体は等速直線運動を続ける」ことを言います。
簡単に言えば、重い物は動きづらいし、動き出すと止めにくいということですね。
バスケットボールのセンター、アメリカンフットボールのラインマンなどは、体重が重いのも1つの武器になります。
2の重心が低いのも安定性に寄与します。
日本人は欧米人に比べて重心が低いため、安定性が高く相撲や柔道では有利に働いてきました。
バスケットボールでもディフェンスの際に「Stay low」と言われ、低く構えるよう指導されますが、これも重心を下げることで当たり合いに強くする戦略です。
3と4の支持基底面については下記の画像をご覧ください。
支持基底面とは床と接している部分を結んだ範囲のことをいい、両脚立位の際は左右の足とその間、片脚立位の際には片脚の底面が支持基底面となります。
両脚の場合は、上記の画像の灰色の網掛け部分が支持基底面となります。
この網掛け部分の面積が広い方が安定性が高くなります。
上記の画像で上はパワースタンスと呼ばれるスタンス、下はストレングススタンスと呼ばれるスタンスです。
- パワースタンス:足幅は腰幅でつま先は正面
- ストレングススタンス:足幅は肩幅でつま先はやや外を向ける
ストレングススタンスはパワースタンスに比べて足幅が広くし、さらにつま先を外に向けることで支持基底面を広くすることができ安定性が高くなるため、強い外力に抵抗するために向いているスタンスになります。
スクワットなどでこのスタンスを取るのはそのためですね。
実際に、バスケットボールのディフェンスでは足幅を広くとるよう指導されますが、これも支持基底面を広くすることでぶつかり合いに強くする戦略です。
また、我々が立位姿勢が保持できているとき、重心から床面に垂直に下ろした重心線は、赤丸1と2のように、常に支持基底面の範囲にあります。
赤丸3のように重心を後ろに倒していき、重心線が支持基底面の外に出た際に我々はバランスを失い、後ろに倒れてしまいます。
皆さんはスクワットなどで踵を意識してしゃがみ込んだ際に、後ろに転びそうになった経験はないですか?
まさにその瞬間が、我々の重心線が支持基底面を外れて後方にいったときです。
赤丸2については支持基底面の内側にあるものの、基底面のより前方に移動しています。
この場合、後ろから押されると重心線はすぐに支持基底面の前方に移動し、前に倒れてしまいます。
つまり、支持基底面の中央に重心線がある方が安定性が高いということになります。
逆に、スポーツなどの構えでは母指球に荷重するよう指導されることが多いですが、これは重心を常に前に保っておくことで、重心線を素早く支持基底面の前方に移動させ、前方にバランスを失うことを利用して前に移動できるようにしています。
勿論、体幹の固定力や最大筋力を高めることも1つの要因ではありますが、それを活かすための構えの姿勢、スタンスなども大きな要因として考える必要がありますね。
まとめ
- 競技やポジションによっては体重を増やすことが競技力を向上させる武器となる。
- 支持基底面とは床と接している部分を結んだ範囲のことで広い方が安定性が高い。
- 重心から床面に垂直に下した重心線が支持基底面から外れるとバランスを失い倒れる。
- スポーツ動作では重心線が支持基底面から外れバランスを失い倒れることを利用することも大切。