RDLとSLDLの違いって何?
皆さんデッドリフトは好きですか?
私は数あるエクササイズの中でデッドリフトが一番と言っていいほど好きです。
理由としては、「負荷を床から直立位まで引き上げる」といったシンプルさの中に、重要な要素が沢山つまっているためです。
自身がトレーニングする際は単純な動作から多くのメリットを得られるため時間効率がよく、指導する立場としては見るべきポイントが多いためやりがいを感じます。
また、スクワット、デッドリフト、ベンチプレスのBIG3の中でも、他の2つと大きく異なる点として、コンセントリックから動作を開始します。
エキセントリックから動作を開始するスクワットとベンチプレスはボトムポジションで伸張反射や弾性エネルギーを活用できますが、コンセントリックから動作を開始するデッドリフトは伸張反射や弾性エネルギーの活用は最小限になります。
このごまかしがきかないところも個人的には好きな理由のひとつでもあります。(決してスクワットやベンチプレスがごまかしだと言っている訳ではありません)
さて、このデッドリフトと呼ばれるエクササイズ、多くの書籍やネットで目にすることが多いですが、種類がいくつかあります。
- コンベンショナルデッドリフト(DL)
- スモーデッドリフト(Sumo DL)
- トラップバーデッドリフト(Trap Bar DL)
- ルーマニアンデッドリフト(RDL)
- スティフレッグドデッドリフト(SLDL)
などが一般的ですね。
今回は下の2つRDLとSLDLの違いについてまとめてみたいと思います。
と言うのも、私自身学生時代にこの違いが理解できず、混同していた経験があるためです。
まずは、各団体の書籍を確認してみましょう。
今回は開始姿勢を中心にまとめてみたいと思います。
ストレングス&コンディショニング第2版 NSCA
スティフレッグドデッドリフト(SLDL):
- バーベルをオルタネイティッドグリップ(またはプロネイティッドグリップ)で握る。
- グリップ幅はおよそ肩幅程度とする。
- スタンスは腰幅として、膝を軽く曲げ、つま先を真っ直ぐ前方に向ける。
- バーベルを大腿前部に触れさせて直立姿勢をとる。
- 肘は伸ばす。
簡単に言うと、バーを持った直立位が開始姿勢となります。
そこから、背すじを伸ばしたまま上体をゆっくりと前に曲げて、バーを床に向かって下してから開始姿勢に戻ります。
私が持っている書籍は第2版なので情報が改訂されている可能性もあります。
トレーニング指導者テキスト JATI
ルーマニアンデッドリフト(RDL):
- 両脚を腰幅程度に開いて、つま先をやや外側に向けて直立する。
- 膝を曲げた姿勢を保持しながら、股関節を曲げて、上半身を前傾させる。
- 膝の外側からバーを握り、膝下まで引き上げ、開始姿勢をとる。
こちらはバーが膝下にくる位置が開始姿勢としています。
そこから、背筋を伸ばしたまま股関節と膝関節を伸ばして直立してから開始姿勢に戻ります。
Starting Strength
私のトレーニングにおけるバイブルと言ってもいいMark Rippetoeの著書です。
ルーマニアンデッドリフト(RDL):
- クリーングリップでバーを握る。
- 踵を20-30cm離したスタンスでつま先をやや外側に向ける。
- 胸を張る。
- 3m先に焦点を当てる。
- 背部を固定し、臀部を後方につき出しながら上体を前に倒す。
- バーが皮膚から離れないようにする。
- 動作開始時に膝のロックを外す時以外は脛を垂直に立てる。
スティフレッグドデッドリフト(SLDL):
Mark Rippetoe氏はSLDLは本質的にRDLと似ていているが、2つのエクササイズは開始姿勢が異なり、ハングポジションから始まるのか、床から始まるのかの違いがあるとしています。
床から始まるSLDLは伸張反射や弾性エネルギーの活用が難しく、通常のDLよりもより上体が水平になり臀部の位置が高くなるため広い関節可動域を必要とします。
多くのクライアントは厳格なフォームでSLDLの開始姿勢を取ることが困難なため、背部をニュートラルに固定できるようRDLよりも膝を曲げて行うべきだとしています。
この膝の曲がる角度は個人の可動域によって異なります。
OLYMPIC WEIGHTLIFTING
こちらはGREG EVERETT氏の著書です。
ルーマニアンデッドリフト(RDL):
- 両脚を腰幅程度に開いて、膝をわずかに屈曲させ直立する。
- つま先をやや外側に向ける。
- 背部を完全に固定させ、股関節から上体を前に倒す。
- バーを常に脚に接地させておく。
- 動作を通して常に膝をわずかに屈曲させた状態を維持する。
スティフレッグドデッドリフト(SLDL):
- 両脚を腰幅程度に開いて、つま先をやや外側に向けて直立する。
- 背部を完全に固定させ、股関節から上体を前に倒す。
- 膝のロックは動作の過程で行う。
まず直立での開始姿勢については、床から開始するのがSLDLだとする意見もあることを認識した上で、その目的である伸張反射や弾性エネルギーの活用を抑えるために、必要であればボトムポジションでしばらく保持してからの静的な動作から挙上を行うことで解消するとしています。
また、RDLとの違いについて膝のロックを外すタイミングについても触れています。
RDLは動作を開始する前に膝のロックを外しておくのに対して、SLDLについては股関節を屈曲させるのと同時に屈曲させ、股関節が伸展するのと同時に伸展させるとしています。
事前に曲げておくのか、動作の過程で曲げるのかの違いということですね。
ちなみに膝の屈曲角はどちらも同様(一般的には15-20度)であると記載しています。
さらに、SLDLについて混同するものとして2つのエクササイズをあげています。
- スティフレッグドデッドリフト(SLDL)
- ストレートレッグドデッドリフト(SLDL)
スティフレッグドデッドリフトについては上述しました。
では、ストレートレッグドデッドリフトとはどういったエクササイズを言うのでしょう。
開始姿勢はRDLやスティフレッグドデッドリフトと同じです。
異なる点は動作を通して常に膝を完全伸展させておくことと、ボトムポジションではバーを脛の方に引きつけず肩の真下に位置させ背部を丸めながらバーを下にリーチしていくことです。
また、リーチした際にプレートが床にぶつからないように台に乗って行うのが良いとしています。
負荷を持って背部を丸めることから否定的な意見もありますが、軽強度・低回数で慎重にエクササイズを行うことで、背部の予期せぬ屈曲に対する抵抗力を強化できるとしています。
現時点においては私はこのエクササイズをプログラムに入れることはしていません。
背部の強化には素晴らしいエクササイズではありますが、リスクマネージメントの観点から選択肢から外しています。代替えのエクササイズとして、バックエクステンションなどを選択しています。
まとめ
以上のことを整理すると、特に日本国内で書籍やトレーナーによってやや見解は異なりますが、RDLとSLDLは異なるエクササイズであると言えますね。
異なる点としては
- 開始姿勢:RDLはハングポジション、SLDLは床
- 膝の曲げるタイミング:RDLは動作開始前に膝のロックを外しておく、SLDLは股関節と同時に膝のロックを外す。
の2点があげられます。
SLDLの開始姿勢について大切なことは、コンセントリックから動作を開始させることなので、ハングポジションから開始してもボトムポジションで静止することで同じような効果を期待できるとのこどです。
また、SLDLに関しては、スティフレッグドデッドリフトとストレートレッグドデッドリフトがあり、これらについても動作が異なるとする意見にも触れました。
現時点での私の理解としては
RDLはエキセントリックから、SLDLはコンセントリックから
と単的に両者を区別しています。
膝の曲げるタイミングに関してはRDLだから、SLDLだからというよりは、クライアントの動作に対する認識や理解度、姿勢制御などを見ながら個人で対応しています。
また、股関節の可動域が狭いクライアントに対してはプリングブロックを用いたり、ラックプルを代用することで可動域を制限しながら行っています。
ボトムポジションで静止するのもありですが、その分バーを保持している時間が長くなり、バーや姿勢を保持するのが困難になるのため基本的には床やプリングボックスから動作を開始するように指導しています。
皆さんのトレーニングや指導の際の参考になれば幸いです。
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