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スクワットにおける膝関節の安定性 その4

今回は膝関節の能動システムについてまとめたいと思います。
前回までの記事は

スクワットにおける膝関節の安定性 その1
スクワットにおける膝関節の安定性 その2
スクワットにおける膝関節の安定性 その3

をご覧ください。

膝関節の能動システムである筋は大別すると

の2つグループに分けられます。
その中でも主要となる筋が大腿四頭筋、ハムストリングス、腓腹筋の3つです。

【図1】

図1の3つの筋肉、どこかでみたような・・・。
肉離れの発症頻度が高い上位3つですね。

  1. ハムストリングス(最も多いのは大腿二頭筋)
  2. 腓腹筋
  3. 大腿四頭筋

肉離れに関する内容は別の機会に記事にしたいと思います。

それでは、膝関節の能動システムの主要な筋であ3つの筋についてまとめていきたいと思います。
まずは第3位の大腿四頭筋の機能解剖に触れていきましょう。

大腿四頭筋

【図2】

大腿四頭筋は

からなり、膝関節の唯一の伸展筋で、神経もたった1つの大腿神経(femoral nerve)が支配しています。
3つの広筋群は全伸展トルクの80%、大腿直筋は20%を担い、広筋群は膝関節のみに作用し、大腿直筋は膝関節と股関節に作用します。
参考までに、それぞれの速筋線維と遅筋線維の割合(%)は

となります。
大腿四頭筋の4つの筋は、結合して1つの腱を形成し、膝蓋骨底に付着し、膝窩骨を介して膝蓋靭帯と続き、脛骨粗面へ付着します。
上記は膝関節伸展機構(knee extensor mechanism)と呼ばれています。

内側広筋と外側広筋は

【図3】

を介して関節包や半月に付着し、関節の安定に寄与しています。

さらに、内側広筋は方向の異なる2つの線維群からなり膝蓋骨の安定にも寄与しています。

【図4】

図4に示したように、上記2つの線維群は膝蓋骨に対して異なる力の直線を持ち、斜頭線維は内側広筋全体の断面積のわずか30%に過ぎませんが、膝蓋骨を斜め方向に引っ張ることで、膝蓋骨が大腿骨顆間溝を滑る際に安定させます。

【図5】

図5の画像に記載されているQ-angleは、

によって形成され、大腿四頭筋が膝蓋骨を上方、外側へ引く傾向にあることを示しています。
この外側に偏った引っ張りは、膝関節に弓弦力を与え、膝蓋骨を外側に脱臼させる傾向にあります。
内側広筋斜頭はこの力に拮抗することで膝蓋骨を大腿骨顆間溝に安定させます。

そのため、Q-angleの増大は膝蓋骨の過度の外側偏位に影響する要因の1つでもあります。
それ以外の外側偏位に影響する要因を表1に示します。

【表1】

ちなみに、怪我や手術後にみられるエクステンションラグについては、

などの理由から、内側広筋斜頭との因果関係はないとされています。
エクステンションラグの改善には大腿四頭筋全体の筋出力を向上させること、その際にはOKCエクササイズよりはCKCエクササイズが良いようです。

内側広筋に関しては膝の最終域での特異的な働きはなく、膝蓋骨の外側への偏位に拮抗することで膝蓋骨を安定させているという理解で良いかと思います。

中間広筋は大腿直筋の下に位置し、大腿四頭筋で最も深層にあります。
そのため、大腿部前面の打撲で衝突物と大腿骨の間に挟まれて損傷してしまうことがあります。
これをチャーリーホースと呼びますが、損傷の度合いが強く血腫が現れた場合、骨化性筋炎を念頭に入れておく必要があります。
骨化性筋炎は、血腫の部分にカルシウムが異常集積し、筋肉内に骨組織を形成してしまい痛みや可動域制限が起こります。
以前は手術で血腫を取り除いていましたが、現在は血栓溶解剤を血腫内に注射して、固まった血腫を溶かして吸い出すため、身体への負担も少なく、より短い期間で復帰できるようになってきました。

ハムストリング

【図6】

ハムストリングは

の総称で、大腿部後面に位置しています。
上記3つの筋は全て(大腿二頭筋短頭を除く)股関節と膝関節をまたぐ二関節筋で、

に作用します。
日常生活では上体を前傾した状態から起き上がる際や、歩行、走行において振り出し脚にブレーキをかける重要な働きをしています。
特に、スプリント走では強いエクセントリックな収縮が要求されます。
最も肉離れが起きやすい部位なのも納得ですね。

半膜様筋は筋腹が膝寄りにあることから、股関節伸展に比べて膝関節屈曲への貢献度が高いようです。
それに対し、半腱様筋は筋腹が股関節寄りに位置し、遠位は長い腱になっています。
そのため、前十字靭帯の再建術をする際にこの腱が用いられることが多く、術後早期は過剰な膝関節屈曲動作などを控える必要があります。
大腿二頭筋の長頭はハムストリングの中で、膝関節よりも股関節への貢献度が高いとされています。
トレーニングにおいても大腿二頭筋のタイトにより片脚のRDL動作で支持脚と対側の骨盤が上方に開く動作がよくみられますね。

また、ハムストリングは大殿筋、脊柱起立筋など身体後面の筋群で構成されるポステリアキネティックチェーン(PKC)の1つとして機能し、屈曲方向への外力に抵抗するanti-Flexion(抗屈曲)、スポーツ動作における推進力を生み出す重要な筋肉でもあります。

アナトミートレインでも

【図7】

SBLを構成する筋に含まれ、姿勢の保持や運動機能に重要な働きをしているとされています。
SBLとはSuperficial Back Lineの略で、足底から頭頂まで、カメの甲羅のように身体後面全体をつなぎ保護しているラインをいいます。
通る部位としては

とされています。

傷害予防、体幹の保持、爆発的な推進力などハムストリングスの機能は多岐に渡ります。
トレーニングにおいては欠かせない部位になりますね。

腓腹筋

【図8】

腓腹筋は膝関節と足関節をまたぐ二関節筋で下腿後面に位置しています。
主な作用は足関節の底屈ですが、膝関節もまたぐため補助的に膝関節の屈曲にも働きます。
膝関節のスタビライザーとしては見逃しやすいですが、考慮すべき筋肉の1つです。

上記でも述べたように、単体としての働きは勿論ですが、その他の筋と強調して働くことも忘れないようにしたいですね。

さて、以前の記事で膝関節を受動的システム、今回の記事で膝関節を能動的に安定させている筋をまとめてみました。
実際にはこれらがバラバラに働いている訳ではなく、神経コントロールシステムによって受動システムと能動システムを協調させながら姿勢を制御しています。

いよいよ次回は、本題であるスクワット動作において膝はどのようにするべきなのかについてまとめていきたいと思います。

まとめ

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