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スクワットにおける膝関節の安定性 その3

今回は膝蓋大腿関節の受動システムについてまとめたいと思います。

前回までの内容は

スクワットにおける膝関節の安定性 その1
スクワットにおける膝関節の安定性 その2

をご覧ください。

膝蓋大腿関節の構造

【画像1】

人体にある骨はその形状から6つの種類に分類されています。

膝蓋大腿関節を構成する大腿骨は人体の中で最大の長骨で、もう一つの膝蓋骨は種子骨に分類され、こちらも人体で最大の種子骨です。
種子骨は特定の腱や靭帯と接する骨で、腱と骨との摩擦を軽減したり、筋が発揮する力を効率的に伝える役割があります。
実際に、ある研究では膝蓋骨を摘出すると内的モーメントアームは4.7cmから3.8cmへと約20%減少し、摘出前と同等の伸展トルクを発揮するには25%大きな力が必要になると報告されています。
膝蓋骨は三角形の頂点を下に向けた形状をし、下側の頂点の部分を膝蓋骨尖、上側の底辺の部分を膝蓋骨底とよびます。
画像1で膝蓋骨の位置を確認するとリラックスした立位では、関節裂隙(大腿骨と脛骨の間)のすぐ近位に位置していることが分かります。
この大腿骨に対する膝蓋骨の位置が高すぎても、低すぎても膝蓋大腿関節に負担がかかります。

Insall-Salvati比

膝蓋骨の大腿骨に対する高さを評価する方法としてInsall-Salvati比があります。
膝関節を30度屈曲位にした状態でX-ray、もしくはMRIを撮り、膝蓋骨の長さ(PL) / 膝蓋腱の長さ(TL)の比を割り出します。
数値が0.8-1.2の間であれば正常ですが、1.2を超える場合は膝蓋骨高位、0.8を下回る場合を膝窩骨低位となります。
膝蓋骨高位のクライアントにみられるものとして、Osgood-Schlatter病、Sinding Larsen-Johansson病、ジャンパーズニー、膝蓋腱断裂、膝蓋骨脱臼、膝蓋軟骨軟化症などがあげられます。
これは膝蓋骨が高位に位置することにより、膝蓋骨が大腿骨軟骨面を超えて骨皮質とこすれ、それにより膝関節の屈伸に伴い軟骨が摩耗し軟骨の軟化を引き起こします。
その結果、膝蓋大腿関節の炎症、膝蓋腱の弛緩、膝蓋骨の外側脱臼を呈します。
原因としては手足が長い選手、大腿四頭筋への慢性的な過負荷による膝蓋腱の炎症や部分断裂などがあげられます。
選手は競技の中で、膝関節優位でプレーする機会が多いので、トレーニングにおいて膝関節優位のスクワットによる膝関節伸展機構へのさらなる過負荷は上記の障害を引き起こす可能性があるため、注意する必要があるかもしれません。

それに対して膝蓋骨低位は

の3つがあげられます。
膝蓋骨低位では膝蓋骨が膝蓋骨滑車の低位に位置しているため、膝関節屈曲時に骨性の接触が早期に起こり膝関節前部痛の原因となることがあります。

膝蓋大腿関節の受動システム

膝蓋大腿関節における受動システムは

の2つあります。
上記の2つは内側広筋と外側広筋の腱で下層の斜めに肥厚した結合組織を膝蓋脛骨靭帯、上層部の横に肥厚した結合組織を膝蓋大腿靭帯とよびます。
内側、外側支帯の機能は膝蓋骨が内・外側、頭側に異常な動きをしないようにトラッキングを中心に集めることで、一側の損傷、委縮、緊張が膝蓋大腿関節のマルトラッキングを引き起こします。

特に、膝蓋骨が外側に外れないようにしている内側支持機構である内側膝蓋大腿靭帯(MPFL)は、その役割を50%以上になっているとされており、損傷することで膝蓋骨の慢性的な外側脱臼を引き起こします。MPFL損傷は膝が内側に入ったい姿勢で膝伸展機構に過度の力が入った際に起こります。

膝が内側に入る要因としては

などがあげられます。

プライオメトリックスやアジリティドリルでの適切なフォームの獲得は勿論ですが、スクワットにおいても膝が内側に入らないようにすることが必要です。
その際に、ただ「膝を内側に入れないで」というだけではなく、なぜ膝が内側に入ってしまうのか原因も追及して改善できるといいですね。

次回は膝関節における能動システムについてまとめたいと思います。

まとめ

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